おいしい本が読みたい
おいしい本が読みたい 第38話 日韓は(似たもの)同士
2020年12月7日 おいしい本が読みたい
先ごろ話題になった映画『パラサイト』は「半地下の家族」という副題だった。土砂降りの雨のときは床に雨水がたまり、豪雨となれば生命まで脅かされる。そうでなくとも、かろうじて明かりがさし込む窓のそばで放尿する酔っ払いがいる。恵 …
おいしい本が読みたい 第37話 武漢は今…
2020年11月3日 おいしい本が読みたい
今では日本の誰もが知っている中国の都市だが、わたしにとっては、COVID19以前に親しみのある名前だった。さだまさしのドキュメンタリー映画『長江』のメイン舞台ともいえる場所だったから。日中戦争の舞台ともなったこの湖北省の …
おいしい本が読みたい 第36話 巫女の文学
2019年11月24日 おいしい本が読みたい
読まないでいるといつか後悔するぞ、と長年宿題にしていた作品のうちの一作をようやく手にした。『苦海浄土 わが水俣病』(石牟礼道子)である。「わが水俣病」のこの「わが」が凄い。「水俣病」の生まれた土地で、「水俣病」を生きざる …
おいしい本が読みたい 第35話 キムさんから教わる日本史
2019年5月31日 おいしい本が読みたい
『故郷の世界史 ―解放のインターナショナリズムへ』(キム・チョンミ著、現代企画室)という面白そうなタイトルに惹かれて手にしたら、意外な中身だった。いや、意外なだけでなく、前回の『敗北を抱きしめて』をめぐる駄文のコンセプト …
おいしい本が読みたい 第34話 敗北の抱きしめ方
2019年3月23日 おいしい本が読みたい
筆にしろペンにしろ、自画像を描くことは思うほど簡単ではないのではないだろうか。自分との距離の取り方がむずかしい。「わたしは、わたしを見るわたしを見ていた」などと謳った詩人の真似を誰でもができるわけじゃない。ちょっと憧れる …
おいしい本が読みたい 第33話 これからの、わたくしの、人生は…
2018年12月12日 おいしい本が読みたい
どうしてこんな面白い物語を読まずに積んでおいたのだろう。読み終わって、最初にこみあげてきた気持ちがこれだ。奥付は2008年10月だから、手に入れたのは今から10年前のこと。白状すれば、一度読み始めたのだが、たちまち挫折し …
おいしい本が読みたい 第32話 大きな歴史と小さな歴史と
2017年6月8日 おいしい本が読みたい
『褐色の世界史』(ヴィジャイ・プラシャド著、水声社)は「第三世界」から見た世界史だ。わたしたちが中学・高校で押しつけられる世界史とはかなり趣が異なる。歴史は原則として強者の歴史であり、したがって、基本的には「第一世界」の …
おいしい本が読みたい 第31話 忘れられない人々
2016年6月2日 おいしい本が読みたい
名作を要約することはできない、としばしばいわれる。要約したところで、換骨奪胎にすぎない。それと同じように、どうあがいても解説不能な作品というものもある。希望に賭ける心情のあまりの純度の高さに、絶望のあまりの深さに、読み手 …
おいしい本が読みたい 第30話 歴史の尺度(修正版)
2016年3月13日 おいしい本が読みたい
最初に恥を忍んで記す、前言撤回ないし修正、と。前言とは、「歴史の尺度」と題した前回の内容のことだが、末尾にこんな書き方をした。 「自分の一生をものさしとして時代を見る。そういう歴史観も必要だろうと思う」日高のこの一言に触 …
おいしい本が読みたい 第29話 歴史の尺度
2015年10月16日 おいしい本が読みたい
鶴見俊輔が逝った。享年93歳。大学という場所に早々と見切りをつけて、自由な発言をした人だ。鶴見たちの手になる共同研究『転向』には、学生になりたての頃、多くの教えを受けた思いが強い。とりわけ橋川文三の、論理的かつ文学的芳香 …