知と文明のフォーラムⅡとは、行き詰った近代文明を打破し、新しい「知」を構築する目的で、北沢方邦、青木やよひを中心に発足した団体です。
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おいしい本が読みたい

おいしい本が読みたい 第50話 未完の点描画

未完の点描画 誰にだって衝動買いはある。こちらの欲望が噴きこぼれそうなときに、あなたを待っていましたといわんばかりに、蠱惑的な外装の商品が目に飛びこんでくる。で、気がついたときには胸にそいつを抱きかかえているわけだ。この …

おいしい本が読みたい 第49話 死者、忘るること勿れ

おいしい本が読みたい 第49話 死者、忘るること勿れ 「最も暗い夜においても、私たちが何者であるのかを問う言葉があります。それは、この惑星に住む人々や生き物たちの一人称の視点の中に入り込むように想像するよう促す言葉であり …

おいしい本が読みたい 第48話 貧しい時代の豊かな物語

宇能鴻一郎が死んだ。だからどうした、という人も当今では多いかもしれん。けれども、昭和人間としちゃあ、「わたし、濡れちゃったんです」の名句をスポーツ紙の一角にいつも躍らせていた、あのエロ作家の大御所を忘れるわけにはいかない …

おいしい本が読みたい 第47話 絶望×絶望=…

おいしい本が読みたい 第47話 絶望×絶望=… ある雑誌を眺めはじめたら、当然のことながら、巻頭インタビュー記事が目に入った。見出しには「絶望読書……」とある。見出しの下には本人の写真もあって、刈り上げふうの髪型をした、 …

おいしい本が読みたい 第46話 旅する物語の物語

友人の熱心なすすめで読みはじめた、ブルガーコフ(1891~1940)の『巨匠とマルガリータ』(1929~40にかけて執筆)だった。これがまた期待をはるかに超えるおもしろさ。現代ロシア(というかソビエト連邦)に得体のしれな …

おいしい本が読みたい 第45話 彗星の光芒              

まさか、渋谷センター街の飲み屋で、こんな話に耳を傾けることになろうとは……、と井の頭線の電車に揺られながら、ぼんやりと酔った頭で反芻していた。今から二十年少し前の話だ。飲み屋というのは正確じゃない。「ロシナンテ」という今 …

おいしい本が読みたい  第44話 世界史から屠場へ 

今回は差別にまつわる作品を二つ紹介しよう。まずは『人種主義の歴史』(平野千果子、岩波新書2022年)。『フランス植民地主義の歴史』でデビューした平野が、領域をヨーロッパに広げ、大航海時代から現代にいたるまでを通観した、ま …

おいしい本が読みたい 第43話 門は開くか?

ある重苦しい雲の垂れこめた日の朝、京城での有名な廓、新町裏小路のとある娼家から、みすぼらしい風采の小説家玄龍がごみごみした路地へ、投げ出されるやうに出て来た。 金史良(キム・サリャン)の小説『天馬』はこんな書き出しで始ま …

おいしい本が読みたい 第42話 文学不動産屋に捧げる銀河鉄道

9年前に物故した桜井じいさんは無類の文学好きだった。その死に方はマンション掃除中に倒れて…というもので、(細部は省くが)じつは野垂れ死に近い。 「雨ニモ負ケズ…には生かさせてもらった」といつも話していた桜井さんらしい最後 …

おいしい本が読みたい 第41話 もう一つの台湾史

『台湾原住民文学選』。10年ほど前、市立図書館の一角にこのシリーズを目にした。各巻300ページ強で全9巻。堂々たる規模で、日本の出版文化の厚みに思わず畏敬の念すら覚えた。5年がかりでこの先週を完成させたのは草風館という出 …

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