知と文明のフォーラムⅡとは、行き詰った近代文明を打破し、新しい「知」を構築する目的で、北沢方邦、青木やよひを中心に発足した団体です。
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おいしい本が読みたい

おいしい本が読みたい 第35話 キムさんから教わる日本史

『故郷の世界史 ―解放のインターナショナリズムへ』(キム・チョンミ著、現代企画室)という面白そうなタイトルに惹かれて手にしたら、意外な中身だった。いや、意外なだけでなく、前回の『敗北を抱きしめて』をめぐる駄文のコンセプト …

おいしい本が読みたい 第34話 敗北の抱きしめ方

筆にしろペンにしろ、自画像を描くことは思うほど簡単ではないのではないだろうか。自分との距離の取り方がむずかしい。「わたしは、わたしを見るわたしを見ていた」などと謳った詩人の真似を誰でもができるわけじゃない。ちょっと憧れる …

おいしい本が読みたい 第33話 これからの、わたくしの、人生は…

どうしてこんな面白い物語を読まずに積んでおいたのだろう。読み終わって、最初にこみあげてきた気持ちがこれだ。奥付は2008年10月だから、手に入れたのは今から10年前のこと。白状すれば、一度読み始めたのだが、たちまち挫折し …

おいしい本が読みたい 第32話 大きな歴史と小さな歴史と

『褐色の世界史』(ヴィジャイ・プラシャド著、水声社)は「第三世界」から見た世界史だ。わたしたちが中学・高校で押しつけられる世界史とはかなり趣が異なる。歴史は原則として強者の歴史であり、したがって、基本的には「第一世界」の …

おいしい本が読みたい 第31話 忘れられない人々

名作を要約することはできない、としばしばいわれる。要約したところで、換骨奪胎にすぎない。それと同じように、どうあがいても解説不能な作品というものもある。希望に賭ける心情のあまりの純度の高さに、絶望のあまりの深さに、読み手 …

おいしい本が読みたい 第30話 歴史の尺度(修正版)

最初に恥を忍んで記す、前言撤回ないし修正、と。前言とは、「歴史の尺度」と題した前回の内容のことだが、末尾にこんな書き方をした。 「自分の一生をものさしとして時代を見る。そういう歴史観も必要だろうと思う」日高のこの一言に触 …

おいしい本が読みたい 第29話 歴史の尺度

鶴見俊輔が逝った。享年93歳。大学という場所に早々と見切りをつけて、自由な発言をした人だ。鶴見たちの手になる共同研究『転向』には、学生になりたての頃、多くの教えを受けた思いが強い。とりわけ橋川文三の、論理的かつ文学的芳香 …

おいしい本が読みたい 第28話 ハイシャのそうぞうりょく

新型の歯ブラシを作ろう、とか、機械を使わずに虫歯を抜く、ということではない。この場合の「ハイシャ」は、歯医者じゃなくて敗者だ。「そうぞうりょく」は創造力でなく想像力。すなわち『敗者の想像力』で今から30年ほど前に岩波書店 …

おいしい本が読みたい 第27話 あの頃の中国が…

もののはずみで、『台湾海峡1949』(リュウ・オウダイ)、『ワイルド・スワン』(ユン・チアン)と中国系の作品を続けて読むことになった。どちらもノンフィクションで、作者は女性である。主人公が作者の母親(あるいは母親と祖母) …

おいしい本が読みたい 第26話 追悼文はつらいよ

著名人の物故者が生まれるたびに新聞紙上に追悼文がのる。故人の業績を褒めたたえ、その人柄を懐かしみ、「一時代が終わった」と締めくくる。たぶん、そんな書式が暗黙のうちに出来上がっているのではないか。むろん死者に発言権はなく、 …

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