知と文明のフォーラムⅡとは、行き詰った近代文明を打破し、新しい「知」を構築する目的で、北沢方邦、青木やよひを中心に発足した団体です。
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おいしい本が読みたい

おいしい本が読みたい 第41話 もう一つの台湾史

『台湾原住民文学選』。10年ほど前、市立図書館の一角にこのシリーズを目にした。各巻300ページ強で全9巻。堂々たる規模で、日本の出版文化の厚みに思わず畏敬の念すら覚えた。5年がかりでこの先週を完成させたのは草風館という出 …

おいしい本が読みたい 第40話 鐵馬は生きている

妻と2男5女を残して父親は何の前触れもなく「鐵馬」とともに失踪する。その「鐵馬」が長年の空白をへて次男たる筆者に発見され、そのときから父親探しが始まる。『自転車泥棒』(呉明益)の物語はこんな出だしだ。「鐵馬」とは息子の名 …

おいしい本が読みたい 第39話 ムズリアリ・クッジマ?

ねじめ正一の『高円寺純情商店街』(1989年直木賞)を覚えているだろうか。高円寺駅の北側を線路に沿って東西に走る商店街を少年の目で描いた、これぞ昭和といった物語である。その高円寺を台湾の首都台北に移してみると、魔法のよう …

おいしい本が読みたい 第38話 日韓は(似たもの)同士

先ごろ話題になった映画『パラサイト』は「半地下の家族」という副題だった。土砂降りの雨のときは床に雨水がたまり、豪雨となれば生命まで脅かされる。そうでなくとも、かろうじて明かりがさし込む窓のそばで放尿する酔っ払いがいる。恵 …

おいしい本が読みたい 第37話 武漢は今…

今では日本の誰もが知っている中国の都市だが、わたしにとっては、COVID19以前に親しみのある名前だった。さだまさしのドキュメンタリー映画『長江』のメイン舞台ともいえる場所だったから。日中戦争の舞台ともなったこの湖北省の …

おいしい本が読みたい 第36話 巫女の文学

読まないでいるといつか後悔するぞ、と長年宿題にしていた作品のうちの一作をようやく手にした。『苦海浄土 わが水俣病』(石牟礼道子)である。「わが水俣病」のこの「わが」が凄い。「水俣病」の生まれた土地で、「水俣病」を生きざる …

おいしい本が読みたい 第35話 キムさんから教わる日本史

『故郷の世界史 ―解放のインターナショナリズムへ』(キム・チョンミ著、現代企画室)という面白そうなタイトルに惹かれて手にしたら、意外な中身だった。いや、意外なだけでなく、前回の『敗北を抱きしめて』をめぐる駄文のコンセプト …

おいしい本が読みたい 第34話 敗北の抱きしめ方

筆にしろペンにしろ、自画像を描くことは思うほど簡単ではないのではないだろうか。自分との距離の取り方がむずかしい。「わたしは、わたしを見るわたしを見ていた」などと謳った詩人の真似を誰でもができるわけじゃない。ちょっと憧れる …

おいしい本が読みたい 第33話 これからの、わたくしの、人生は…

どうしてこんな面白い物語を読まずに積んでおいたのだろう。読み終わって、最初にこみあげてきた気持ちがこれだ。奥付は2008年10月だから、手に入れたのは今から10年前のこと。白状すれば、一度読み始めたのだが、たちまち挫折し …

おいしい本が読みたい 第32話 大きな歴史と小さな歴史と

『褐色の世界史』(ヴィジャイ・プラシャド著、水声社)は「第三世界」から見た世界史だ。わたしたちが中学・高校で押しつけられる世界史とはかなり趣が異なる。歴史は原則として強者の歴史であり、したがって、基本的には「第一世界」の …

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