駱駝に乗る
メガネ:馬乳酒をご馳走になった遊牧民のゲルは、エルセン・タサルカイ(砂の飛地)という半砂漠の中にあって、ここの主人は、観光客を乗せるための駱駝を管理している。
ヒゲ:駱駝は観光にも用いてるんだ。
メガネ:何家族かの駱駝をまとめて観光にも使っているらしい。

観光用の駱駝 Photo by Yukio Morinaga

ヒゲ:で、キミは駱駝に乗ったの?
メガネ:もちろん。駱駝には悪いとは思ったけど、この機会を逃せば駱駝とは縁がなくなるからね。
ヒゲ:料金は?
メガネ:砂漠の丘を往復して30分ばかりかな。2万トゥグルグ(1000円)だった。
ヒゲ:乗り心地はどうだった?
メガネ:ふたコブの真ん中に跨って、前のコブに軽くつかまる。ゆったりと砂丘を眺めていたよ。駱駝は穏やかな性格なんだね。
ヒゲ:それは良かった。

砂丘に向けて散歩 Photo by Yukio Morinaga

 

大空に舞った花の凧
メガネ:このあと、この砂漠で遊牧民の子どもたちと凧を揚げた。
ヒゲ:凧? なんで?
メガネ:「モンゴルの青空に凧を揚げる」というのも、ボクたちの旅の目的だった。
ヒゲ:凧なんて、小学校以来、触ったこともないなぁ。
メガネ:子どもたちに花の写真を撮ってもらい、プリントして、連凧をつくった。モンゴルの子どもたちに揚げてもらうために。
ヒゲ:連凧って?
メガネ:32cm×32cmの凧を30枚ほどつなげる。函館市立東高校の美術教師だった梅谷利治先生の発案。今回の旅は、この高校のOB・OGが主体で、恩師の凧をモンゴルで揚げたいという強い思いもあった。

青空に花の連凧が揚がった Photo by Yukio Morinaga

ヒゲ:そうか、キミたちは彼らに便乗したわけか。
メガネ: 「子どもは凧にかかわるとすごい才能を発揮する。ものの価値はひとつではない。それぞれの子どもたちの才能を見つけなければ、この学校の教職をやっている資格がないじゃないか」。これは梅谷先生の言葉だけど、ボクたちはこの考えに共感したんだよ。
ヒゲ:なるほど。それが結果的に立派な国際交流になった!
メガネ:ささやかな交流だけど、こんな地道なプロジェクトが大切だと実感した。子どもも大人も、大草原で生きいきしてたよ。カラコルムでは高校生にも参加してもらった。

遊牧民の子どもたちと Photo by Mio Kisaka

カラコルムの高校生たちと Photo by Mio Kisaka

遊牧民の子どもたちと記念写真 Photo by Yukio Morinaga

 

中国・ロシアに依存するモンゴル経済
ヒゲ:ところで、モンゴルの物価水準はどうだった?
メガネ:スーパーやコンビニにも行ったけど、日本とあまり変わらない。コーヒー1杯が400円だったよ。

ウランバートル郊外のスーパーマーケット

ヒゲ:それは驚き。だって、賃金水準には差があるはずだね。
メガネ:そうだね。モンゴルの賃金水準は日本の4分の1というから、物価はずいぶん高いということだね。
ヒゲ:他に日本人の観光客はいた?
メガネ:1組がやはりバスで移動していた。けど、韓国からの観光客が遥かに多いらしい。
ヒゲ:地理的に近いしね。
メガネ:韓国の人たちは随分賑やからしいよ。バスのなかでもよく飲み、よく歌うとか。日本のグループは静かですねぇ、と運転手が感心していた。
ヒゲ:貿易面でも韓国が進出している?
メガネ:輸出は圧倒的に中国だそうで、なんと80%を占めている。石炭、銅、鉄、金などの鉱物が主だとか。
ヒゲ:輸入は?
メガネ:やはり中国とロシアで60%以上。続いて日本、韓国という順らしい。
ヒゲ:うーん、経済的には中国・ロシアとの関係が深いなぁ。
メガネ:でも、日本に対しては、好感度はすこぶる高いとか。

人気の日馬富士
ヒゲ:日本の相撲界はモンゴル出身の力士抜きには考えられないけど、彼らの評判はどうなんだろう。
メガネ:朝青龍や白鵬よりも日馬富士の人気が高そう。
ヒゲ:へえー、どうして?
メガネ:日馬富士は私財を投じて学校をつくったという。金儲けに忙しい他の力士とは違うということだね。
ヒゲ:そんな話は聞いたことないね。
メガネ:ウランバートルの郊外に日馬富士がつくった学校があった。

日馬富士のつくった学校

(つづく)

2024年7月26日 ワーニャじいさん