メガネ:大寒を過ぎて、本格的な寒さがやってきたね。
ヒゲ:でも、周りの木々をよく見ると、花の蕾がふくらんできて、春も遠くないと思ったりするよ。
メガネ:コブシの蕾はまるで雪をまとっているみたいだ。
ヒゲ:ほんと、季節はめぐってるね。
メガネ:日も長くなってきてるし、まずは「光の春」かな。
ヒゲ:大寒を 知らぬふりして 猫はいく
メガネ:キミの俳句にはノーコメント。
ヒゲ:アメリカでは、トランプが復活して、好き放題やってるね。
メガネ:移民の強制送還、LGBTQの人たちへの迫害、極右過激派の恩赦など、人権と法の軽視もはなはだしい。なんでこんな人物が大統領に選ばれるのか、不思議でしかたないよ。
ヒゲ:オレもそれをずっと考えていた。そして、なるほどと思わせる言説に遭遇した。
メガネ:どんな?
ヒゲ:1月24日の朝日新聞に掲載されたマイケル・サンデルへのインタビューだよ。彼はクリントンとオバマに責任があるという。
メガネ:え、彼らは比較的進歩的な大統領だったよね。
ヒゲ:だけども彼らは、レーガンからはじまった新自由主義を無批判に引き継いだ。
メガネ:規制緩和をして、自由競争を奨励したんだね。日本の小泉元首相もそれに同調した。
ヒゲ:その新自由主義経済の負の部分にトランプはつけこんだ。グローバリゼーションはアメリカの製造業に壊滅的な打撃を与えたからね。
メガネ:いわゆるラストベルトを産んだ。
ヒゲ:ラストベルトの労働者たちは民主党の支持基盤だったんだけど、今回はそのラストベルト4州すべてでトランプが勝利した。雇用を奪われ、労働の尊厳を失ったことは、アメリカの白人中間層にとっては大問題だった。
メガネ:移民の問題もそこにつながるのかな。
ヒゲ:そればかりではなく、「能力主義」の新自由主義は、格差を拡大した。
メガネ:アメリカでは、10%の所得層が、70%の富を所有しているというね。これは2010年の統計。いまではもっと格差は広がっているはず。
ヒゲ:トランプはいう。地球温暖化はフェイク。石油・石炭を掘りまくり、高関税を課せば、アメリカの製造業は復活する。
メガネ:しかも、現在の経済を牛耳っているのは、一握りのエリート。
ヒゲ:反エリートというのも、白人中間層に訴えるものがあったんだろうね。
メガネ;だけど、新自由主義のグローバリゼーションはアメリカばかりではないよ。
ヒゲ:フランス、ドイツ、イタリアなど多くの国々も同様で、やはり極右が勢力を伸ばしている。
メガネ:で、対抗する手段はあるの?
ヒゲ:格差を縮小し、中間層のアイデンティティを回復する。
メガネ:平等な社会を目指すことだよね。国際的にも南北間は不平等だよ。
ヒゲ:平等のキーワードを「富の再分配」と「脱商品化」と、トマ・ピケティはいっている。
メガネ:医療と教育を無償にした北欧などは脱商品化が進んでるね。
ヒゲ:累進課税はさらに推し進める必要があるよ。日本は、高度成長期の最高税率は75%だったのに、現在は45%だよ。
メガネ:それと、新しいコミュニティの創出も大事だと思うな。人と人の温かな関係が結ばれること。
ヒゲ:ピケティは、アメリカのバーニー・サンダースを評価している。日本にも、望ましい社会像を明確に提示する政治家が出てきてほしいものだ。
2025年2月4日 ワーニャじいさん