今年の10月、第49回衆議院議員総選挙があった。2021年も残すところわずか、私のなかの記憶の風化が進まないうちに、東京12区に来てくれた応援弁士のこと、その発せられた言葉を記しておくことにした。

10月15日「市民と野党をつなぐ会‘東京」のキックオフ集会が永田町・参議院会館の講堂で開催され、私はボランティアで参加した。この時発せられたこの会による声明は、市民と野党の共闘による候補者の1本化の実現→政権交代をめざす、に至る経過を簡潔に伝え、そして選挙後の野党共闘バッシングまでも予見しているかのようだったので掲載。

「市民と野党の共闘はここまで来ました。2015年9月の安保法制の強行採決を受けて、私たちは、”市民と野党の共闘で政権を代える”というミッションを掲げました。それから6年、今回、憲政史上初めて、市民連合の共通政策のもとに立憲野党が結束して政権を目指す総選挙を迎えました。道は半ば、未だ1合目かもしれないし、これからジグザグも落石もあることでしょう。第49回総選挙、市民と野党が力を合わせて頑張りましょう」

「市民と野党をつなぐ会‘東京」

10月15日「市民と野党をつなぐ会‘東京」のキックオフ集会

 

★前川喜平さんー民主主義への裏切り行為を終わらす選挙に

10月20日、東京12区野党共闘候補は共産党の池内さおりさん。その応援弁士は元文科省官僚だった前川さん。“30数年の役人の時はずっと共産党から「おまえは敵だ」と言われてきた私が、何故今はここに居るのか?それは自民党が腐りきっているからです。政権側、内側にいた私だから分かります。お好み焼きに例えれば、トッピングの部分だけが岸田さん、その下は麻生や安倍さんなんです。宏池会は、すべての国民を豊かにし、軍事大国にならないという保守本流の立場だった。もうそうした自民党に期待して投票しても皆さん、それは無駄です。今の自民党は右翼政党、人よりも国が大事という。今回、立憲野党は政策協定を結んでいる。どれも自公政権では絶対にやれないことばかり、そして私たちにはやってほしいことが並んでいます。是非、見てください。今回は政権選択の選挙、必ず投票に行き、人間の命を大事にする国を主権者として作っていきましょう!”

前川さんは29日も再び応援に!「政権交代以外に日本の進む道はない、自公政権の民主主義への裏切り行為を終わらす選挙に」とこの時も強く警鐘を鳴らされていた。

前川喜平さん

 

★仁藤夢乃さん 生きる力をそぎ落とすのが性暴力

選挙応援は初という仁藤さんが赤羽駅前と十条で24日「国会で性暴力やLGBTのことを取り上げてくれた候補を国会に戻して」とトーク。性暴力や家庭内での虐待で居場所のないまま街に出た10代の女性たちが、今度は性産業の魔の手に絡み取られ、性搾取に合ってしまう今の日本。その支援を続けてきたのが仁藤夢乃さん。「生きる力をそぎ落とすのが性暴力」の言葉にシーン…。「今日早めにこの場所に着いた若い子から、背広着た男ばかり。私、こんな服装で来たけどいいかな?とメールが来た。でもそれは別の候補者の応援に来てる人たちだった。今ここに居る人たちは、皆、てんてんばらばらに自由に好きな服で来てる。いろんな人がいることカラフルって大事。でも今の日本の政治は男社会そのもの」と仁藤さん。それを裏付けるかのように「連合東京」は背広で応援の党(公明党)支援を決めた。

仁藤夢乃さん

 

★上西充子さん 野党統一候補なら堂々応援できるから嬉しい

流行語大賞トップ10入賞の「ご飯論法」という斬新ネーミングで、安倍元首相らの国会答弁のごまかしを可視化してくれたのが上西充子法政大教授。27日、王子駅前公園と王子3丁目で応援!国会論戦を路上で映像するというこれも上西さんが編み出した「パブリックビューイング」、国会での不明朗答弁も、切り取って圧縮してテレビ放映すると、まともに答えているように見えしまうから始めた、と説明されていた。女性の不安定雇用から痴漢問題まで、被害女性とつながり、本気で解決しようとする人が国会の中に戻ることが必要。今回の選挙では「野党統一候補」ということになり、堂々と応援できてうれしいと!前川喜平さんに続いてのこの国の政治をバッサリ切れる論客の登場だった。

上西充子さん

 

★山本太郎さん 生きていることが怖くない国へ

29日、やってきたのは「れいわ新選組」の山本太郎さん。「私たちの誰でも、いつ寝たきりになるかわからない。でもそうなった時、今は社会のお荷物になる、家族の迷惑になると思ってしまう。寝たきりになった時のビジョンがこの国にはないから。徹底した公助で、誰でも胸を張って生きれる社会に変えよう!それはまだ実現していないけど生きていることが怖くない国へ変えていこう」の言葉に「そうだ!」の声あがる。

れいわ新選組の山本太郎さん

 

★佐高信さん “おっさん政治”変えよう

29日午後4時の大塚駅前の応援弁士は辛口評論家の佐高信さん。政治を変えるとはつまり“おっさん政治”を変えるということ。高市早苗さんのような女だけれどもおっさんのような人もいるけれども。岸田は文雄ではなく安倍文雄であり、麻生文雄であり、甘利文雄なんですよ。表紙だけ、顔だけ変えてもこの3Aが背後霊のように岸田には付いている。その自民の政治にブレーキをかけると言いながらアクセルを踏んでいるのが公明党。そして大阪維新!ここにくっついているのが竹中平蔵、つまり新自由主義。新自由主義とは会社の行動を自由にする、経営者にとって都合のいい社会にする自由ということ。若者の非正規をこんなに増やし、未来の夢を奪っておいて、若者は政治に無関心だ、の批判はおかしい。「はこぶね(方舟?)の社会の底でつぶされたミカンのごとき若者がいる」の句を残して32歳で自殺した萩原慎一郎という歌人。非正規だった。彼をミカンのようにつぶしたのが自公政権。そうでしょ?と佐高さん。舌鋒は衰えていなかった

佐高信さん

 

★『シジフォスの神話』のように

東京12区の選挙戦最終日30日の赤羽駅。黒山の人で埋まり「ジェンダー平等の大きな流れを、この東京12区から日本中に巻き起こしていきましょう!」の池内さおり候補の演説に大きな歓声が沸き、黄色いペンライトが振られていた。この光景はちょっとデジャビ。6年前の国会前のよう。「野党は共闘」の声でできた「市民連合」によって、小さな石を積み上げ積み上げするようにして小選挙区の1本化が進められてきた。日本の政治の腐敗もマスコミの劣化もあの時よりも更に進み、ここで止めねばの思いの選挙だったし、その実現への期待も大きかった。しかし結果は厳しかった。東京12区で池内候補は3位で終わり、比例復活もなかった。そして比例当選は自民、維新も比例復活で当選、そして激戦といわれた12区を制したのはあの連合東京にも推された公明党議員だった。

私たち、また、明日から石を積み上げるのか…の思いと共に大きな岩を山の頂上にまで運びあげ、だがその岩はあっというまに転げ落ちる、シジフォスはまた、岩を運び上げ続ける、永遠に、という、昔、読んだカミユの短編『シジフォスの神話』が浮かんだ。民主主義を達成するとか、自由を求めての変革って、そうそう簡単ではないことをシジフォスの行為を通じてカミユは告げていたのだろうか?

国会