知と文明のフォーラムⅡとは、行き詰った近代文明を打破し、新しい「知」を構築する目的で、北沢方邦、青木やよひを中心に発足した団体です。
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楽しい映画と美しいオペラ

楽しい映画と美しいオペラ――その137

「真実」の断片で判断してはならない――イルケル・チャタク『ありふれた教室』 ドイツの中学校の教室が舞台のひとつである。日本の学校と異なるのは、生徒たちが多様だということ。アジア、アフリカ、中近東など、ヨーロッパ系ではない …

楽しい映画と美しいオペラ――その136

投げかけられた重い問い――濱口竜介『悪は存在しない』 冒頭、深い森の樹々が映し出される。森のなかを歩く人が仰ぎ見るであろう風景が、延々と。そして、一組の父娘が、この森を歩く。手をつないで、また、父が娘を背負うなどしながら …

楽しい映画と美しいオペラ――その135

原爆投下はなぜ防げなかったのか――クリストファー・ノーラン『オッペンハイマー』 強烈な光と、それに続いてもくもくとわき上がるキノコ雲。大画面は不気味にうごめき、会場を揺さぶる大音響。1945年7月16日、アメリカは南部ニ …

楽しい映画と美しいオペラ――その134

水が語る人間の歴史、そして未来――坂本龍一『TIME』 薄明かりの照明のもと、舞台には一面に水がひかれている。かすかな水の音。ぽとりぽとりと、雨が滴る音。静寂そのものの舞台は、深い森のなかなのか。 水の音は、この作品の作 …

楽しい映画と美しいオペラ――その133

信仰は革命に抗しえたか?――プーランク『カルメル会修道女の対話』 1794年7月17日、16人のカルメル会修道女が断頭台の露と消えた。このオペラは、その歴史的事実をテーマとしている。主人公は侯爵令嬢のブランシュで、彼女は …

楽しい映画と美しいオペラ――その132

繊細で絶妙なヘテロフォニー――能『松風』再び 橋掛りの奥の方から、対話を交わしているような謡の声が聴こえる。松風・村雨姉妹の登場である。彼女たちは汐汲みの帰りだが、まだ姿は見えない。微妙に重なりあうふたりの声。私の待ち望 …

楽しい映画と美しいオペラ――その131

生きること、喜びと哀しみと――ヴィム・ヴェンダース『PERFECT DAYS』 この映画の最後のシーン。役所広司扮する平山の、トイレ清掃車を運転する顔がアップで映し出される。それも何分間かの長いカットである。笑っているよ …

楽しい映画と美しいオペラ――その130

歌で満たされたコンサート――プレトニョフ指揮の北欧音楽 ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマーク。北欧の国々は私の興味を惹きつけてやまない。人々の幸福度を調べると常に上位に位置するし、教育の先進性の観点からも注 …

楽しい映画と美しいオペラ――その129

生活のなかの「魔法」――アキ・カウリスマキ『枯れ葉』 映画が終わって階段を降りていたら、誰かが「枯葉」を口ずさんでいる。中年の主人公たちの恋がやっと実って、ふたりが広い公園を去っていく場面に流れていた有名なシャンソンであ …

楽しい映画と美しいオペラ――その128

死と埋葬と祈りと――パオロ・タヴィアーニ『遺灰は語る』 「私はお墓に行く必要はありません。なぜなら、両親はじめ大事な人の遺骨は全部我が家にあるんですから」。あるネット上のセミナーに参加して、こんな話を聞いた。死生学を研究 …

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