知と文明のフォーラムⅡとは、行き詰った近代文明を打破し、新しい「知」を構築する目的で、北沢方邦、青木やよひを中心に発足した団体です。
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年別アーカイブ: 2019年

楽しい映画と美しいオペラ――その89

愉悦に満ちたオペラのよう——92歳ブロムシュテットの『ハ短調ミサ』 ヘルベルト・ブロムシュテット。スウェーデンの指揮者で当年92歳。彼の指揮するモーツァルトの『ハ短調ミサ』を聴いて、円熟とはなんだろうと考えた。若々しいリ …

おいしい本が読みたい 第36話 巫女の文学

読まないでいるといつか後悔するぞ、と長年宿題にしていた作品のうちの一作をようやく手にした。『苦海浄土 わが水俣病』(石牟礼道子)である。「わが水俣病」のこの「わが」が凄い。「水俣病」の生まれた土地で、「水俣病」を生きざる …

楽しい映画と美しいオペラ――その88

安楽死を考える——映画『君がくれたグッドライフ』とNHKスペシャル『彼女は安楽死を選んだ』 仲間が集まり、年に一度の自転車旅行に出かけようとしている。行く先はベルギー。誰かが「今回はどうしてベルギー?」と問いかける。まあ …

フォーラムをめぐる人々―映画『主戦場』

慰安婦問題の本質を考える 「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」の中止は残念でした。芸術監督が津田大介氏だっただけに、もう少し頑張ってほしかった。電話やネットでの攻撃の有効性を認めてしまう結果になっ …

楽しい映画と美しいオペラ――その87

家政婦クレオが守った「家」——アルフォンソ・キュアロン『ROMA/ローマ』 幼少期のことを思い出すことがある。小川で魚を釣ったこと。昆虫採集で野山を駆け回ったこと。5月の浜辺で潮干狩りをやったこと。これらの光景は、すべて …

フォーラムをめぐる人々―映画『新聞記者』

「内閣情報調査室」は政府の謀略機関か?! 「ハンセン病家族訴訟 控訴へ」。これは今日(7月9日)の朝日新聞朝刊の一面の大見出しです。「元ハンセン病患者の家族への賠償を国に命じた熊本地裁判決について、政府は控訴して高裁で争 …

むさしまるのこぼれ話 その九 微かな陽

『シークレット・サンシャイン(密陽)』(監督イ・チャンドン) これはもう、ひたすらラストシーンを語りたい作品だ。 どこにでもころがっている、しもた屋風の家の庭先。そこにある台に鏡を置いて、パンプスをはいたワンピース姿の女 …

おいしい本が読みたい 第35話 キムさんから教わる日本史

『故郷の世界史 ―解放のインターナショナリズムへ』(キム・チョンミ著、現代企画室)という面白そうなタイトルに惹かれて手にしたら、意外な中身だった。いや、意外なだけでなく、前回の『敗北を抱きしめて』をめぐる駄文のコンセプト …

楽しい映画と美しいオペラ――その86

古典芸能継承の光と陰————狂言を伝える『よあけの焚き火』 日本ほど古典芸能が、原初の形で残っている国は珍しいという。能・狂言はその典型だろうし、これらを専門に上演する国立の劇場も存在する。毎月4、5演目は上演され、チケ …

おいしい本が読みたい 第34話 敗北の抱きしめ方

筆にしろペンにしろ、自画像を描くことは思うほど簡単ではないのではないだろうか。自分との距離の取り方がむずかしい。「わたしは、わたしを見るわたしを見ていた」などと謳った詩人の真似を誰でもができるわけじゃない。ちょっと憧れる …

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