むさしまるのこぼれ話
むさしまるのこぼれ話 その十九 いのち、宿る、とき
2023年11月20日 むさしまるのこぼれ話
アニメ『耳をすませば』(1995年)はわたしにとって忘れられない映画のひとつだ。忘れられない理由はその冒頭の数分間に尽きる。不思議さや懐かしさやらで、ひどく心を動かされてしまったのだ。 懐かしさのほうは、簡単なこと。思い …
むさしまるのこぼれ話 その十八 多情の行方
2023年8月24日 むさしまるのこぼれ話
まだ海辺の田舎町で、のほほんとギンヤンマを追いかけていた頃、庭の片隅の木葉に雨蛙がまどろんでいる格好に思わず見とれたことがあった。そうして注視しているうちに、ふと気づくと、この蛙くんにはひとつ余計な、あるいは贅沢なモノが …
むさしまるのこぼれ話 その二十四 暗⇒明⇒暗?
2023年6月11日 むさしまるのこぼれ話
ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』を読んで心を揺さぶられた人は多いだろう。わたしもその一人だが、疑問を抱いた点が二つある。ひとつは、知的障害者の主人公チャーリーの抱える世 …
むさしまるのこぼれ話 その二十三 WANDAからW・A・N・D・Aへ
2023年3月9日 むさしまるのこぼれ話
この人はどこまで堕ちてゆくのだろうか? 映画を観終わって最初にこう思った。この人とはワンダ、アメリカの主婦の名である。馴染みのない人名なので某百科事典を繙いたら「WANDA(もしくはVANDA)は都市Cracovie(ポ …
むさしまるのこぼれ話 その二十二 「悪人」ってなに?
2022年12月5日 むさしまるのこぼれ話
祖母と二人暮らしの祐一(妻夫木聡)、妹と二人暮らしの光代(深津絵里)、この孤独な男女が出会い系サイトで知り合う。祐一は初デートからいきなり光代をホテルに誘う。コトが終わって光代にお金を差し出す、ほかの女にもしてきたように …
むさしまるのこぼれ話 その二十一 ふるさとは北にありて…
2022年8月25日 むさしまるのこぼれ話
『ダンサーの純情』(パク・ヨンフン、2005年)は好きな映画だが、偽装結婚のために中国から韓国にやってきた娘チャン・チェミンのありきたりなサクセスストーリーで、良作とはいいかねる(本編の後に映し出される女優ムン・グニョン …
むさしまるのこぼれ話 その二十 男と女の間には…
2022年6月10日 むさしまるのこぼれ話
香港の二組の夫婦が同じ日に、あるビルの隣り合う二部屋に引っ越してくる。かたや海外出張に多忙な夫を持つ妻、かたや残業を繰り返す妻を持つ夫。一方の妻ともう一方の夫が狭い廊下と階段ですれ違うこともままある。そのうち、ふとしたき …
むさしまるのこぼれ話 その十九 これぞ、映画!
2022年4月20日 むさしまるのこぼれ話
3つ年上の幼馴染マー坊は無類の映画好きだ。もともとはモデルガンおたくで、映画にのめりこんだのは、ジョン・ウェインの雄姿が取りついたせいじゃないだろうか。小太りの体にのっかった丸顔が楽しそうに西部劇の名シーンを次から次へと …
むさしまるのこぼれ話 その十八 美麗島(台湾)は、今…
2021年12月14日 むさしまるのこぼれ話
大空の彼方からだんだん高度を下げるにつれて、ある島だけが光り輝いて見えてくる。さらに地表に近づくと不可思議な文様が、あるいは波のようにうねる縞模様になって、あるいは葉脈の拡大写真のようになって、画面いっぱいに広がる。 縞 …
むさしまるのこぼれ話 その十七 生きにくさ、に抗して
2021年11月3日 むさしまるのこぼれ話
『どっこい生きてる』 市立図書館の貸し出しDVDコーナーで手にとったこの作品。見たいと思った理由のひとつは、主演リストに河原崎長十郎と中村翫右衛門が並んでいたから。そう、『人情紙風船』のあの二人だ。それともうひとつ、ケー …