むさしまるのこぼれ話
むさしまるのこぼれ話 その二十九 歳月は等しからず
2024年9月16日 むさしまるのこぼれ話
『精神0』(監督想田和弘、2020年)の冒頭で精神科医の山本晶知(当時82歳)が最初にむかえる患者の顔は、たしかに見覚えがあった。医師を食い入るように見つめる目は、2008年の前作『精神』のときに見せた、どこか不安を隠し …
むさしまるのこぼれ話 その二十八 「国語」は国民をつくる
2024年6月16日 むさしまるのこぼれ話
「国語」は国民をつくる(のか?) 『パリ20区、僕たちのクラス』(2010)という作品は、移民の流入にあえぐヨーロッパの大都市の現状を切り取って秀逸だ。多文化主義などというお題目をとなえるより、こういう映画を観て日本の移 …
むさしまるのこぼれ話 その二十七 風貌…
2024年2月7日 むさしまるのこぼれ話
むさしまるのこぼれ話 その二十 風貌… 『阿賀に生きる』(佐藤真監督、1992年)は、阿賀野川流域の農村で暮らす三組の老夫婦の日常生活を中心に追ったドキュメンタリーである。長谷川夫妻は農業、遠藤夫妻は船大工、そして加藤 …
むさしまるのこぼれ話 その二十六 いのち、宿る、とき
2023年11月20日 むさしまるのこぼれ話
アニメ『耳をすませば』(1995年)はわたしにとって忘れられない映画のひとつだ。忘れられない理由はその冒頭の数分間に尽きる。不思議さや懐かしさやらで、ひどく心を動かされてしまったのだ。 懐かしさのほうは、簡単なこと。思い …
むさしまるのこぼれ話 その二十五 多情の行方
2023年8月24日 むさしまるのこぼれ話
まだ海辺の田舎町で、のほほんとギンヤンマを追いかけていた頃、庭の片隅の木葉に雨蛙がまどろんでいる格好に思わず見とれたことがあった。そうして注視しているうちに、ふと気づくと、この蛙くんにはひとつ余計な、あるいは贅沢なモノが …
むさしまるのこぼれ話 その二十四 暗⇒明⇒暗?
2023年6月11日 むさしまるのこぼれ話
ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』を読んで心を揺さぶられた人は多いだろう。わたしもその一人だが、疑問を抱いた点が二つある。ひとつは、知的障害者の主人公チャーリーの抱える世 …
むさしまるのこぼれ話 その二十三 WANDAからW・A・N・D・Aへ
2023年3月9日 むさしまるのこぼれ話
この人はどこまで堕ちてゆくのだろうか? 映画を観終わって最初にこう思った。この人とはワンダ、アメリカの主婦の名である。馴染みのない人名なので某百科事典を繙いたら「WANDA(もしくはVANDA)は都市Cracovie(ポ …
むさしまるのこぼれ話 その二十二 「悪人」ってなに?
2022年12月5日 むさしまるのこぼれ話
祖母と二人暮らしの祐一(妻夫木聡)、妹と二人暮らしの光代(深津絵里)、この孤独な男女が出会い系サイトで知り合う。祐一は初デートからいきなり光代をホテルに誘う。コトが終わって光代にお金を差し出す、ほかの女にもしてきたように …
むさしまるのこぼれ話 その二十一 ふるさとは北にありて…
2022年8月25日 むさしまるのこぼれ話
『ダンサーの純情』(パク・ヨンフン、2005年)は好きな映画だが、偽装結婚のために中国から韓国にやってきた娘チャン・チェミンのありきたりなサクセスストーリーで、良作とはいいかねる(本編の後に映し出される女優ムン・グニョン …
むさしまるのこぼれ話 その二十 男と女の間には…
2022年6月10日 むさしまるのこぼれ話
香港の二組の夫婦が同じ日に、あるビルの隣り合う二部屋に引っ越してくる。かたや海外出張に多忙な夫を持つ妻、かたや残業を繰り返す妻を持つ夫。一方の妻ともう一方の夫が狭い廊下と階段ですれ違うこともままある。そのうち、ふとしたき …