世界音楽入門&西村朗の夕べ

講師:北沢方邦、西村朗、演奏:上野信一、蛭多令子、藤本隆文、松永加也子、上野信一&フォニックス・レフレクション
会場:セシオン杉並

以下に掲載するのは浦達也氏より北沢方邦氏宛の私信です。ご両者の了承を得てここに転載させていただきしました。浦達也氏はNHKの元チーフ・ディレクター。教授だった江戸川大学を拠点に、東大などでメディア論を講義。著書に、『実感の同時代史』(批評社)など。

北沢方邦先生
浦 達也
2008年4月23日
謹復

今回は4/9の「レクチャー・コンサート」にお招きいただき誠に有難うございました。長時間になるためレセプション・交流会だけは体調調整のため別場所で休養してましたが、第一部・第二部とも通してばっちり「世界音楽」 提唱の北沢哲学(新しい知の方向、ゲーテ→ベートーヴェンを踏まえた)と、天才作曲家・西村朗さんを中心に据えた最前線の表現者たちの実演が聴衆をも 巻き込んで見事に交差交流しあう、この大饗宴を堪能しました。と同時に予測 をはるかに超えた「事件」ともいうべきこの瞬間にこの場所に立ち会えて本当 に良かったです。深謝しています。

世界の初めの「訪れ」は「音連れ」であったとも言われていますが、「世界音 楽」という概念は「音楽」というより更に初原的で多様性のある「音」とか「振動」そのもののように感じました。(僕の大好きなENYAの曲にも似ています)。

なお第二部の冒頭で北沢先生がレセプションで「“主観性”をネガティブに捉えすぎていないか?」という質問が出たことに対して丁寧に説明をしてくださり、実は僕も同じ疑問を持っていたのでその真意がよく分かりました。他のことは第一部のレクチャー&対論(構成が巧み)でよく分かり、ドビュッシーと バルトークの演奏でその「現代性」や「宇宙観」が体感できました。

第二部は文字通り「西村朗の夕べ」となり、これが滅茶苦茶(最高の褒め言葉)に楽しい(というより楽しすぎる)。ハップニングすら楽しい(失礼)。何より演奏者が凄い。超一流のピアノだ。超技巧も何だか楽しみながら心身一体で舞い踊っているようだ。顔も楽しい上野信一門下のパーカッション・グループのお姉さんお兄さんも師匠同様に元気一杯喜一杯。僕も一緒に叩きたくなった(こんなことを思ったのは初めて)。金管楽器の方がより霊的世界への参加感を誘う。

代わりに精一杯の拍手(とブラヴォー)。しかし西村さんは北沢先生同様に観客席でも舞台に上がってもクールだ。そこがまたいいのだ。お二人からは詩のような素敵な言葉やレトリックも沢山いただいた。知も血も音を連れて舞い共鳴しあった夢の饗宴は20時に終わった。その余韻はいまなお続く……
嬉しかった。
たのしかった。
久しぶりに哲学と音に酔う。

謹白