「内閣情報調査室」は政府の謀略機関か?!

「ハンセン病家族訴訟 控訴へ」。これは今日(7月9日)の朝日新聞朝刊の一面の大見出しです。「元ハンセン病患者の家族への賠償を国に命じた熊本地裁判決について、政府は控訴して高裁で争う方針を固めた」と記事にあります。

ところが同紙夕刊の一面の大見出しには「ハンセン病家族訴訟 控訴せず」。つまり、朝刊の記事は、近来まれな大誤報であった訳です。「誤った記事、おわびします」との見出しで、謝罪の文章も一面に載っています。

朝日新聞は政府にガセネタをつかまされたなのではないか、という印象を私は持ちました。これは、今日観た映画『新聞記者』の影響です。この映画には、政府が「内閣情報調査室」を通して、様々な謀略をめぐらす実態が生々しく描かれています。朝日新聞はいうまでもなく安倍首相の天敵。新聞社にとって誤報ほど不名誉なことはありません。一番大切な信用が失墜するのですから。

映画には、前川喜平元文科事務次官の「出会い系バー通い」リークも描かれています。政府を批判する者に対しては、その人の信用を失わせるのが一番手っ取り早い。じつに安易で効果的な手法です。総理べったり記者による伊藤詩織さんへの性的暴力事件のもみ消しも登場しますが、これも巧みに伊藤さんを中傷します。伊藤さんの行動には政治的な背景があるのだと。そしてハイライトは加計学園問題です。新潟市に端を発する獣医学部設置の真の目的は、生物兵器の研究ではないかと問いかけています。

もちろん映画はフィクションで、上記の事件も実名では出てきません。しかし誰が観ても現実を想起するし、権力の空恐ろしさを実感するはずです。「この国の民主主義は形だけでいいんだ」。内閣情報調査室のトップの官僚がうそぶくこの言葉こそ、現政権の本質を物語っているような気がします。

前川喜平氏やこの映画の原案者望月衣塑子氏らが参加する座談会の実映像を挿入するなどしてリアリティ十分。出演者も熱演で、観ごたえのある政治映画になっています。この種の映画には珍しく興行成績がいいのだそう。UPLINK吉祥寺も98の座席はほぼ満席でした。

2019年7月9日 於いてUPLINK吉祥寺

2019年日本映画
監督:藤井道人
脚本:詩森ろば、高石明彦、藤井道人
原案:望月衣塑子
製作:河村光庸
出演:シム・ウンギョン、松坂桃李、高橋和也、田中哲司、北村有起哉
本田翼、西田尚美

2019年7月9日 森淳