2021年4月13日早朝、放射能汚染水の海洋放出を閣議決定した菅政権。首相官邸前では昨日に続き今日も「勝手に決めるな!」の声が上がった。トリチウム以外にもストロンチウムなどの人体にも魚たちにも有害な複数の核物質が除去できていないのに、漁業組合が絶対反対なのに、海外からの強い抗議もあるのに、そして海洋放出しないですむ他の手段が種々提言されているのに、まったく耳を貸すことはなかった。このような行為はネイティブ・アメリカンの教えというか知恵「「七代先の子孫を考えて決定する」からはなんと遠いことか…

13日の官邸前での反対行動には320人が集まった

10年前の3.11事故後に発足したこの日の主催団体(さようなら原発1000万人アクション)の横断幕

 14日、中国外務省の趙報道局長は、麻生太郎財務相の「飲んでも何てことはないそうだ」の発言を受けて「飲めるというなら飲んでみてほしい」と即反応。そして「太平洋は日本の下水道ではない」とも皮肉ったとか。いったん、流しはじめたら40年以上は流し続けることになるというから確かに下水道状態になりかねない。海の生き物たちがどうなるのか、それを食べる私たちはどうなるかは確かめられた訳ではない。放出までは、幸いあと2年ある。この際、麻生さんに日本を代表して、毎朝飲んでもらわねば!そして私たちは反対のための行動を諦めずに継続していきたいものだ。

東京・北区王子駅前の市民による反対行動(4.17)、今後も継続する予定

 

国際環境NGOグリーンピースの解説がわかり易いので、詳しくはこちらで。

■「処理水=トリチウム水」ではない

まず、政府は「処理水」に含まれているのはあたかもトリチウムだけであるかのように喧伝していますが、これは事実ではありません。ALPS(多核種除去設備)ではトリチウムだけでなく、炭素14も取り除けません。

また、取り除くはずだったのに残ってしまっている放射性物質には、ストロンチウム90、セシウム137、セシウム134、コバルト60、アンチモン125、ルテニウム106、ヨウ素129、プルトニウムなども含まれています。

たとえばストロンチウム90はカルシウムに化学的性質が似ていて、人の体内では骨や骨髄に蓄積し、発がんの危険性があります。炭素はすべての生きものの基本構成要素なので、炭素14は体内のあらゆる場所で細胞DNAを損傷する可能性も・・・

これらを含んだ汚染水が海に放出されれば、放射性物質は海水に紛れてそれぞれ世界中に拡散し、 生態系の中で生態濃縮が起こります。 マグロやキンメダイに水銀が濃縮されるように、のちの世代にわたって汚染が続くのです。たとえばセシウム134のように半減期が2.1年と比較的短い放射性物質もありますが、 炭素14の半減期は5,730年です。

福島で農業や漁業、流通に携わってきた方々は、この10年、苦労に苦労を重ねながら、復興を信じて努力を積み重ねてこられました。放出が始まれば完了まで数十年かかりますが、そのあとも、汚染は数千年以上にわたって海の中で続くのです。

皆さんのこれまでの努力はどうなるのでしょうか。

放射能で汚染された海でとれた海産物を口にするのは、わたしたちだけでなく、子どもや孫やもっともっと先の世代にも及ぶのです。

■ 実現可能な代替案はすでに提示しています

グリーンピースは、海外で運用されているより高精度な処理設備を導入して放射性物質を限界まで取り除いたうえで、現在のタンクより大型で堅牢なタンクに移し、残りの放射線値が一定以下に下がるまで当面のあいだ保管し、その間に放射性物質を除去する技術を開発するという解決策を提案しています。

グリーンピースだけでなく、他の団体や個人の皆さんも、それぞれに実現可能な代替案を提示しています。

「保管用地が足りなくなる」という海洋放出の理由も事実に反しています。

東電は先週、汚染水タンクの増設を表明しています。

汚染土を保管している場所を汚染水タンクの用地として利用することもできますし、用地が足りないなら土地を提供すると名乗り出ておられる地元の方もいらっしゃいます。

■ 「海洋放出」決定の理由

今回の決定は、各関係者が平等にじゅうぶんに議論を重ねて導き出した結論ではなく、実際の議論の過程も、海洋放出で影響を受ける方々の意見も無視し、最も安易で安価に原発事故をなかったことにできる方法として決められたのだと思います。

こんなことを許してはいけないのです。

国連人権高等弁務官事務所は、4月15日発表の声明文で「環境と人権に大きな危険を及ぼすものであり、汚染水を太平洋に放出するという決定はいかなるものであっても容認できる解決策ではない」としています。

グリーンピースは、これからも、できる限りの手段を尽くして、汚染水の自然界への放出をくいとめるための行動を続けます。

■グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当 鈴木かずえ