メガネ: 今日は暖かくていい天気だね。
ヒゲ: こんな天気を小春日和というんだろうね。
メガネ: ここは水元公園の北の外れだけど、冬のキミの書斎だね。
ヒゲ: そう。陽当たりがよくてね。前の広やかな畑は菖蒲園だよ。梅雨時にはキレイな菖蒲が咲くよ。
メガネ: ここにも菖蒲園があるんだ。この公園のメインの菖蒲園は、ずっと南の方だよね。
ヒゲ: そうだね。菖蒲の盛りの時でも、見物人はここまではなかなか足を運ばない。
メガネ: あそこに大きなサギがいるね。何だろう?
ヒゲ: あれはアオサギだよ。のんびりひなたぼっこかな。では、ここで一句。
アオサギと ひねもすのたり 小春かな
メガネ: うーん。なんと言ったらいいか。ところで、キミの関心事、学術会議問題。
ヒゲ: 残念ながら、オレの予想どおりの展開だね。「総合的、俯瞰的な観点から」と「人事の詳細には答えられない」。政府は、この一点張りだからね。
メガネ: 政府の方針に楯突く学者は許さない、という任命拒否の理由は明らかだけど、これは口が避けても言えない。
ヒゲ: それで、壊れたレコードのように、ふたつの言葉を繰り返している。そのうち、野党もメディアもうんざりして、この問題も忘れ去られる、というわけだ。モリ・カケ・サクラという「成功体験」がある。
メガネ: 学界には、政府批判は避けようという雰囲気が広がるよね。菅総理の狙いどおりだよ。
ヒゲ: オレが不思議なのは、思想の自由の問題としてこれほど重要な事柄なのに、菅政権の支持率がいっこうに下がらないことだよ。
メガネ: アメリカではバイデンさんが勝利したけど、トランプさんも半分ちかくの票を獲得したね。7,000万票以上! これも理解に苦しむね。
ヒゲ: 菅政権支持とトランプさん支持とは、共通項があるのではないか。
メガネ: どういう?
ヒゲ: 一言でいうと、エスタブリッシュメントに対する反感。あまり好きな言葉ではないけど、「反知性主義」。
メガネ: 学者や学問を軽視するという姿勢は、菅さん、トランプさんに共通しているね。
ヒゲ: 菅さんは、田舎出の苦労人というイメージをうまく演出している。
メガネ: それと、経済もありそうだよ。
ヒゲ: 人々はパンとサーカスを求めている、というからね。学術会議問題はサーカスになりそうもない。でもパンはもちろん重要な問題。安い労働力を求めて工場は発展途上国に移転した。その矛盾のなかで苦しむ人たちの心をトランプさんはつかんだんだろう。
メガネ: グローバリズムを推進したのは、まさにエスタブリッシュメント!
ヒゲ: そして、経済のグローバリゼーションが貧富の差を拡大したのは間違いない。でもトランプさんは自国中心主義を唱えるだけで、解決への思想は持っていないよ。
メガネ: 菅さんはどうなの?
ヒゲ: 竹中平蔵氏など成長戦略会議のメンバーを見ただけでも、それはわかるよ。競争を加速化して中小企業を淘汰する。新自由主義の権化だよ。政治の第一の目的、富の再分配という思想はまったくないといっていい。
メガネ: ではどうして支持率が下がらない?
ヒゲ: 既得権益打破、規制改革、縦割り行政是正、デジタル庁設置など、一見わかりやすい政策を掲げているからかなぁ。当たり前のことなのにね。
メガネ: メディアの責任も大きいのでは。
ヒゲ: そうだね。国会中継を見ていると、学術会議問題など菅総理の答弁はしどろもどろ。秘書が後ろから答弁のメモを渡すと、それを棒読みだよ。自分の言葉を持っていない人だということがよくわかる。
メガネ: メディアはまったくその実態を流さないね。
ヒゲ: とにかくオレたちは、広く、確実な情報をつかんで、政権を監視していく必要があるよ。TBSラジオの「荻上チキ・Session」は、そういうニュース番組として出色だと思うよ。

2020年11月18日 ワーニャじいさん