先月観た中国映画は不思議な作品だったな。意味があるんだかないんだか、何が言いたいんだかさっぱり分からんのよ。そのくせ、あと後まで、映像ばかりがちらつく。例えば、中国の文革時代の下放されたいわゆるインテリの青年が、山のなかの小高い丘にある小学校の校庭で、荷車らしきものの上にちょこんと飛び乗る。背景は夕焼け風で青年の体のシルエットが人形のように浮かぶ。何だろ、これ? 意味を追い求めるわたしらは堕落した人間なのかもな、と思ったりする。

不思議はいっぱいある。もう一つ、どうもよく分からない音がある(実はいくつもあるんだけど)。あるシーンで、カポンカポンと音がする、池のなかに乾いた太い竹を何本か浮かべて、そいつらをぶつけているのかもなあ、と思わせる音響で、これも忘れられないなあ。

忘れてたけど、冒頭のシーンも忘れがたい(変だね、この書き方)。いい年のオッサンが結構な太さの竹の筒で煙草を、無言で、吸っている。そこに主人公らしき青年が登場し煙草をめぐんでもらう。言葉は一切なし。言語なんかで大切なことは伝わらないよ、といわんばかりなのだな、これが。

さて、何の映画でしょうか? ジャーン! 答えはチェン・カイコーの『子供たちの王様』でした。