成田空港に巨大な飛行機が飛び交って久しいというのに、なんで今更?といぶかる人も多いだろうけれども、先週は『三里塚のイカロス』(代島治彦監督)を見てきた。観客はざっと見積もって十人、ほぼ同世代の人々だった。大学紛争以降、狭山裁判や成田闘争などがクローズアップされた頃に、血気盛んな青年期を迎えた世代だ。わたしの近辺では、政治の動きにそこそこ興味があれば、どちらかの集会に身を置いたことがある人も少なくないはず。

見終って、しばし茫然としてしまった。ちっちゃな箱庭のなかで、蟻んこのような自分が右も左もわからず、精一杯こぶしを突き上げて空港反対を叫んでいた… それも、すでに頭上をジャンボジェットが轟音をがなり立てているさなかに。

映画は、さる左翼セクトの現場責任者の自省のことばとその姿を映すシーンで終わる。「自分たちの方針は間違っていた」。こんな終わりかたでいいのだろうか?との疑念が胸をかすめる。その一方で、三里塚の農村に嫁いだ女性たちの、現地の文字通り土に根差した生活から生まれることばに、安堵とも言い切れないが少し慰撫してくれる吐息が漏れた。

リアルタイムの政治的運動の全体像をつかむことは本当にむずかしい。現場に行かなければ、運動の息吹は決して伝わらない。だけれども、現場だからこそ見えにくいこともある。懸命になればなるほど見えにくい。それを教えてくれたのがこの映画だった。