昨日は氷雨から雪、今日は牡丹雪から雨と、満開の紅梅を背景に、久しぶりに本格的なお湿りである。ホピのシャボテンを出しておく。ホピは伊豆と北緯35度と緯度は同じだが、海抜2,000メートルの高原で、はるかに寒さきびしく、雪が深い。十分水を吸ったことだろう。

心躍るニュース 

今井哲昭さんから来信で、ホピの村々の主権を制限しようという憲法改正案が、1月27日の住民投票(部族議会と書いたのは誤りのようです)で否決されたとのこと、「拒絶されました!……ほっとして胸が熱くなりました。ホピは永遠です!(どこかで聞いたようなことばですが)。ホピの伝統を守る力がまだ生きている証です」という文面から彼の感動が伝わってくる。伝統派はつねに投票を拒否してきたので、伝統派の棄権で法案が通ると伝えてきた報道が、伝統派の危機感をあおったようだ。

もうひとつの心躍るニュースは、いうまでもなくエジプトである。ムバラク大統領が辞任し、紅海の保養地シャルム・エル・シェイク(アル・シーク)に事実上の国内亡命をしたとのこと。つい前日に任期切れまで辞任はないとテレビ演説したムバラク氏の目算はみごとにはずれた。治安警察やムバラク支持派(そのかなりは私服の治安部隊だといわれている)の暴力による多数の犠牲者をだしながらも、数週間にわたって持続した民衆の大デモンストレーションに危機感をいだいた軍が、民衆の主張に同調して動いたものと思われる。事実、怒りを買った治安部隊に代わりタハリール(解放)広場などに出動した戦車や装甲車の兵士たちと民衆は、きわめて友好的であったし、デモの映像のなかに、将校の制服を着た予備役または退役軍人たちもみかけたからである。

この「革命」ともいうべき大デモは、ベン(ビン)・アリ大統領を退陣に追い込んだテュニジアの民衆革命に刺激されて起こったことはいうまでもない。だが、いわゆる野党勢力が主導したわけでも、ムスリム同胞団のような組織が動員したわけでもなく、不特定の民衆がまったく自発的に運動を開始したことは特筆すべきである。

ABCやBBCあるいはアル・ジャズィーラのニュースは欠かさず見てきたつもりだが、その映像では、初期には多数の女子学生をも含む若者が中心で、しだいに普通の市民や主婦たちが加わり、広場を埋め尽くす何万という数に膨れあがっていった。

問題は今後である。イスラームという共有の価値観とエジプト固有の文化のうえに、欧米とは異なる民主国家をどのように築きあげていくのか、またその主体はだれが担うのか、課題は山積している。また国際的に、アラブの主導的大国であったエジプトがどのような国となり、どのような外交政策をとるか、それは今後の世界に大きな変化と影響をもたらす。

私としてはエジプトが、いわゆる穏健なイスラーム国家となり、同じく穏健なイスラーム国家に変貌しつつあるトルコ、やがて改革派が主導権を奪回するに違いないイランなど中東諸大国と連携し、アラブ諸国からパキスタンやアフガニスタンにいたるまでを巻き込んだ「中東イスラーム経済文明圏」の確立にむけて歩むことを期待したい。

かつてイラクなどと並行して社会主義的近代化を図り、それによる統一アラブの夢を抱き挫折したエジプト、近年は、新自由主義経済による経済成長を図り、これも貧富の格差拡大などで挫折した(これが今回の革命の経済的背景である)エジプト。モデルはもはやどこにもないことを自覚しなくてはならない。

いうまでもなく、これは自戒のことばでもある。新自由主義経済と新保守主義政策によって格差と閉塞状況をもたらした――残念ながら民主党政権はその変革の期待に応えることができないでいる──わが国も、同じくまったく先行するモデルのない状況に置かれている。エジプトのひとびと同様、われわれはわれわれの手で、脱近代の国、さらには文明のモデルをこの東洋の地に造りだしていかなくてはならない。