楽しい映画と美しいオペラ
楽しい映画と美しいオペラ――その74
2017年7月17日 楽しい映画と美しいオペラ
デヴィーアの声に酔う――ベルカントオペラの最高峰『ノルマ』 イタリアオペラはなんといっても歌である。それも甘美で流麗な歌! そういう意味では、ベルカントオペラこそ、イタリアオペラそのものではないか。私の愛してやまないヴェ …
楽しい映画と美しいオペラ――その73
2017年6月29日 楽しい映画と美しいオペラ
意表をつく映像美と深遠なメッセージ――ドゥニ・ヴィルヌーヴ『メッセージ』 オペラにしろ、文楽にしろ、また演劇にしろ、生身の人間が眼前で演じる舞台は、演者の発する稀なエネルギーを直接身体に感じることができる。切ない恋を語る …
楽しい映画と美しいオペラ――その72
2017年5月7日 楽しい映画と美しいオペラ
女性性とはなんだろうと考えた――荻上直子『彼らが本気で編むときは、』 映画の上映時間の2時間余、左隣の中年女性の手には、ずっと白いハンケチが握りしめられていた。しばしばそれで目頭を拭う。その動作に影響を受けたわけではない …
楽しい映画と美しいオペラ――その71
2017年3月2日 楽しい映画と美しいオペラ
愛と夢の映画、スパイスは狂気と哀しみ――人生を歌う『ラ・ラ・ランド』 エンディングに流れた、哀愁に満ちたピアノのメロディーが、まだ頭のなかに響いているような気がする。左隣の若い女性も、右隣の中年の女性も、ハンケチで目をぬ …
楽しい映画と美しいオペラーーその70
2017年2月1日 楽しい映画と美しいオペラ
愛の概念の地平を広げる——『キャロル』と『リリーのすべて』 2016年に上映された映画のベストテンが発表された。権威があるのは「キネマ旬報」であろうが、「スクリーン」の洋画ベストテンには深い感慨を覚えた。10本のうち7本 …
楽しい映画と美しいオペラ――その69
2016年12月23日 楽しい映画と美しいオペラ
敵討ちを超える普遍的心性――文楽 通し狂言『仮名手本忠臣蔵』 加藤周一は日本人の行動パターンを批判して「忠臣蔵症候群」と評したことがあった。たいしたことはない目的にも関わらず、徒党を組んで盲目的に邁進する姿勢を揶揄したの …
楽しい映画と美しいオペラ――その68
2016年11月30日 楽しい映画と美しいオペラ
革命を予感させる放蕩者――北とぴあの『ドン・ジョヴァンニ』 悲劇的な未来を予感させる暗く重厚な響き。一転、曲調は軽快味を加えて、そのあと明と暗は絡まりあいつつ、レポレロの最初のアリアに引き継がれる。『ドン・ジョヴァンニ』 …
楽しい映画と美しいオペラ――その67
2016年11月6日 楽しい映画と美しいオペラ
サスペンスフルな不条理劇――深田晃司『淵に立つ』 両親と娘の三人が朝の食卓を囲んでいる。妻と娘は神に祈りを捧げているので、キリスト教の信者だと分かる。夫はそれを意に介することなく、すでに食事を始めている。次の場面は夫の作 …
楽しい映画と美しいオペラ――その66
2016年9月19日 楽しい映画と美しいオペラ
象徴性に溢れた名舞台――二期会の『トリスタンとイゾルデ』 『トリスタンとイゾルデ』第2幕の劇的な幕切れ。私は拍手をすることができなかった。できなかったというより、拍手を忘れた。あるいは忘れるくらい呆然自失の状態に連れてい …
楽しい映画と美しいオペラ――その65
2016年9月1日 楽しい映画と美しいオペラ
誰が『ローマの休日』を書いたのか――『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』 8月16日にNHKBSで放映された『ジョニーは戦場に行った』は、アメリカの名脚本家、ダルトン・トランボの唯一の監督作品である。名画にはいい脚本 …