知と文明のフォーラムⅡとは、行き詰った近代文明を打破し、新しい「知」を構築する目的で、北沢方邦、青木やよひを中心に発足した団体です。
ブログ

むさしまるのこぼれ話

むさしまるのこぼれ話 その十七 生きにくさ、に抗して

『どっこい生きてる』 市立図書館の貸し出しDVDコーナーで手にとったこの作品。見たいと思った理由のひとつは、主演リストに河原崎長十郎と中村翫右衛門が並んでいたから。そう、『人情紙風船』のあの二人だ。それともうひとつ、ケー …

むさしまるのこぼれ話 その十六 揺れる心の『赤と黒』

『ハチドリ』  画面の主人公ウニは中学2年で、ソウルの集合団地に暮らす。家族は父母と兄と姉。一家総出でやりくりする家業の餅屋は典型的な零細企業で暮らしは楽でない。いきおい父親は子供たちに高学歴を期待する。けれども、期待と …

むさしまるのこぼれ話 その十五 戦争から戦争へ

『清作の妻』 今、女が手にしている五寸釘の切っ先は、まもなく夫の両眼に突き刺さるだろう。夫は失明し、兵役を免れるだろう。その結果、世間の顰蹙を買いつつも、少なくとも命は長らえるに違いない。出征祝賀会の座を離れて、たまたま …

むさしまるのこぼれ話 その十四 修道女のコルトレーン

『イーダ』 第二次世界大戦終結から17年後の1962年。戦禍の傷跡もいえぬポーランドの修道院に孤児として育った少女アンナは、修道女誓願式を控えて、一度も会ったとのない唯一の縁者たる叔母ヴァンタを訪ねる。初対面の姪にヴァン …

むさしまるのこぼれ話 その十三 ダンプと赤線地帯

『洲崎パラダイス 赤信号』 1956年、日活。 監督:川島雄三。出演:新珠三千代、三橋達也、芦川いずみ、轟友起子、河津清三郎、小沢昭一。 江東区にある洲崎川にかかる洲崎橋のたもとに一軒の居酒屋兼貸しボート屋がある。橋の向 …

むさしまるのこぼれ話 その十二 民と民と民と…

『長江哀歌』(原題:三峡好人Still life)(三峡の善人)(監督ジャ・ジャンクー) 三峡ダムによって埋没の運命にある奉節(ホンジュ)の街にたどり着く男と女がいる。男は16年前に幼子を連れて出奔した妻を求めて、女は2 …

むさしまるのこぼれ話 その十一 寂しさと温かさと

目と目が合った、その老人と。ある宴会の席上でのこと、どの席が空いているか、立って眺め渡していたわたしの視界に、一番奥の席の老人の投げる眼差しが飛び込んできた。なにやら意味ありげな、いたずらっぽいといってもよさそうな、その …

むさしまるのこぼれ話 その十 タンゴは続く、どこまでも

『サタンタンゴ』(監督タル・ベーラ) ぐずつく空、ぬかるんだ地面、寒村の倉庫の薄汚れた壁… そんなモノクロームの映像が、文字どおり延々と、観ている者の感覚マヒを狙うかのように、続いてゆく。上映時間7時間18分。これは、わ …

むさしまるのこぼれ話 その九 微かな陽

『シークレット・サンシャイン(密陽)』(監督イ・チャンドン) これはもう、ひたすらラストシーンを語りたい作品だ。 どこにでもころがっている、しもた屋風の家の庭先。そこにある台に鏡を置いて、パンプスをはいたワンピース姿の女 …

むさしまるのこぼれ話 その八 台北の青い空

台湾の映画監督侯孝賢(ホー・シャオシェン)の作品中でいちばんのお勧めは、と問われたら、ためらうことなく「非情城市」と答える。今まで観た台湾映画のなかでは屈指のものだ。けれども好きな昨品は、と聞かれたら、たぶん「戀々風塵」 …

« 1 2 3 »
PAGETOP
Copyright © 知と文明のフォーラムⅡ All Rights Reserved.