知と文明のフォーラムⅡとは、行き詰った近代文明を打破し、新しい「知」を構築する目的で、北沢方邦、青木やよひを中心に発足した団体です。
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楽しい映画と美しいオペラ

楽しい映画と美しいオペラ――その114

愛の本質を問う――『愛と哀しみの果て』(原題『アフリカの日々』) 彼はサファリにも蓄音機を持参した。 3丁の銃と1ヶ月分の食糧。 そしてモーツァルトを。 映画の冒頭、いまは年老いた主人公が、過去を回想する。私は彼女のこの …

楽しい映画と美しいオペラ――その113

北朝鮮は「地上の楽園」か?――ドキュメンタリー映画『スープとイデオロギー』 この映画の主人公は、1930年生まれの、在日コリアンの老女である。オモニ(母)という言葉がぴったり感じられる、まことに存在感のある美しい人で、こ …

楽しい映画と美しいオペラ――その112

明日もまた生きていくために――アッバス・キアロスタミの映画 臨場感という言葉がある。その場に居合わせる感覚だが、アッバス・キアロスタミの作品ほどその感覚を味わえる映画は少ない。たとえば車を運転する場面。『桜桃の味』や『そ …

楽しい映画と美しいオペラ――その111

レオンハルトの伝統を引き継ぐ――バンジャマン・アラールのチェンバロ じつに11年ぶりにチェンバロの演奏会に出かけた。その音色は多彩で、品があり、奥行きの深さがある。若い音楽家の奏でる音色とは思えない。私は、もはや伝説とな …

楽しい映画と美しいオペラ――その110

霧のなかの真実――田坂具隆『この父に罪ありや』 田坂具隆の『この父に罪ありや』は、50分の小品である。しかし、観終わって、大長編映画を体験したかのような感慨をもった。テーマがいく層にも重なり、そのそれぞれに思考を巡らさな …

楽しい映画と美しいオペラ――その109

新しいヴィオレッタの出現――中村恵理の『椿姫』 名作といわれている作品には、観るたび、聴くたびに新しい発見がある。ヴェルディの『椿姫』は名作中の名作で、舞台で、ビデオで、CDでと、いく度観聴きしたか分からない。 最初の体 …

楽しい映画と美しいオペラ――その108

平凡な生活のなかのサスペンス――濱口竜介『偶然と想像』 濱口監督の語り口はうまい。うますぎて、鼻につくほどだ。それでもその語り口に乗せられて、いつの間にか物語に没入している自分を発見する。何気ない生活の一断面。それは偶然 …

楽しい映画と美しいオペラ――その107

新しい才能に喝采――カーチュン・ウォン指揮のマーラー『第5番』 音楽界の新しい潮流についてはまったくうとくなっている。NHKBSプレミアムで深夜に放映される番組を録画して、何カ月も経ってやっと観ることになるのだが、そのと …

楽しい映画と美しいオペラ――その106

自由と孤独の物語――クロエ・ジャオ『ノマドランド』 ノマド(nomad)とは英語で遊牧民、流浪者のことである。現代では、好きな時間に好きな場所で働く人や働き方をノマドというらしいが、この映画の主人公ファーンは、自らノマド …

楽しい映画と美しいオペラ――その105

LD時代の歌姫たち エディタ・グルベローヴァが亡くなった。享年74歳。昨年のミレッラ・フレーニに続いて、私のLD時代の歌姫がこの世を去るのは、なんとも寂しい。わけても、グルベローヴァは同年代であるゆえに、その寂しさはひと …

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